電装系の良くあるトラブル レギュレーターのパンクについて

バイクに長い事乗っていると、いるいるなトラブルを体験します。その中でも電装系のトラブルは、直接トラブル原因が見える事はほとんど無いので厄介です。
その厄介なトラブルのうち、比較的多くのライダーが体験する[レギュレーターのパンク]について書いてみる事にしました。


レギュレーターとは…
正確には[レギュレート・レクチファイア]という名前のパーツで、整流と電圧制御を受け持っています。
クランクシャフトから駆動されるジェネレーターは交流発電機で、現行の大型バイクではほぼすべて三相交流(単相×3)です。
一方バイクの電装系はバッテリーを使う事からもわかるとおり直流仕様ですから、このままでは利用できません。そこで直流への整流を行い、バッテリーの充電等に使えるようにするのがレクチファイアです。
さて、整流されて直流を得た訳ですが、ここで得られた直流は電圧も電流もエンジン回転数に依存する為とても不安定で、そのままバッテリに流すとバッテリーが壊れてしまいます。レクチファイアは単純に整流するだけで、変動を抑制する機能はありませんから仕方ないですね。

特に最近のバイクに使われているMF(メンテナンスフリー)バッテリは入力電圧変動に対する耐性が以前の開放型に比べて小さいので、正にあっという間に壊れてしまいます。
それじゃあ、どうすればいいの?
  →バッテリに流しても平気な電流・電圧に規制すれば良い訳で、ここでレギュレーターの登場です。
ここで右の図の登場です
縦軸はバッテリ端子間電圧、横軸はエンジン回転数です。
回転数が低いうちは一方的な放電で、端子間電圧は変化しません(厳密には回転数に比例して低下しますが、バッテリーが十分に充電されているうちはそこから補填されるので、変化しないように見えます)。
スロットルを開けて回転数が上昇すると、発電量が次第に増えます。そして消費量を追い越した時に端子間電圧が上昇しはじめます。
そのまま開け続けると消費電力が増加しますが、発電量はそれ以上に増加するので電圧はどんどん上昇します。
そのまま放ったらかすとバッテリの許容電圧をオーバーしてしまうので制限電圧を設定し、バッテリーを保護します(この流れを示したのが黄色のラインです)。
でも、いくら制限しても上流のジェネレーターからはどんどん電気が送られています。それが黄色のラインより上の余剰電力という部分です。
ダムに例えると、全力放流しているのにどんどん水嵩が増して決壊する寸前!という感じですね。
さて、どうするか?…ここで電気の性質を利用します。
ジェネレーターか発電した交流はプラスとマイナスの電圧の絶対値が同じです。ですから整流によってプラス12Vを得ると、もう一方はマイナス12Vになります。もうわかりましたね?プラスとマイナスで打ち消しあいをさせるのです。物理でいう対消滅みたいな感じですね。


レギュレータがパンクするのは…
メーカーのサイト等を調べても、メーカーに質問をしても、明確に原因を教えてはくれませんでした。場合によっては「半導体による無接点制御なので、基本的に消耗する事はない」なんて返事がきたり…でも、実際の話パンクするんですよね~。私はホンダ車3種で各一回ずつ1098になってから3回経験してますから、「偶発的な…」という説明を真に受ける事はできません。でも、パーツ交換をすると復旧するので、釈然としないながらもパーツを注文していました。
ある時、ちょっとバイクで用事を済ませて帰宅し、すぐにシートカウルを外して作業をはじめた時に、何気なくレギュレーターを触ったら結構熱かったのでびっくり。これがきっかけで色々調べ、レギュレーターの構造と機能をを知りました。
余剰電力は正負の互いを打ち消しあう事で消化しているなら、何でこんなに熱くなるんでしょう?
答えは回路の電気抵抗です。正負にかかわらず回路抵抗によってエネルギーの一部が熱になります。すると回路抵抗が増えて、ますます発熱します。すると…と無限ループになってどんどん発熱が大きくなり、最終的には許容温度をオーバーして壊れてしまうわけです。許容温度を超えないまでも、それに近い状況が頻繁にまたは繰り返し発生すれば少しずつ劣化し、最終的に故障する事は十分考えられます。
シートカウル内等の換気されにくい場所に取付けられていと、事態の悪化に拍車をかけますね。


パンクするとどうなるか…
レギュレーターがパンクすると、電圧は右図の赤いライン黄色いライン上を推移するようになります。
私は個人的に赤いライン型を解放系パンク黄色いライン型を制限系パンクと読んでいます。解放系の場合は電装系に200ボルト以上の高電圧が流れるようになり、制限系ならバッテリーに全く充電されなくなります。
こうなると短期的には以下のような現象が発生します。

  • 正常な充電ができなくなり、頻繁に上がります。新品バッテリーに交換しても改善されません。
  • 頻繁にヘッドライトバルブが切れたり、極端に暗くなったりします。
  • 開放型バッテリの場合は、セルが干上がったり、信号待ちなどでツーンと鼻を突く塩素臭がします。
  • コネクターが焼損してヒューズが飛びます。放って置くとバイクが炎上する事になりかねません。

ついでに言うと修理に必要なパーツ代が高額になって、懐が寒くなります。


パンクさせないために…
バンクする原因が熱である事がわかっているのですから、継続的に可能な限り多く放出するようにすれば、目的は達成できます。

1. ヒートシンクを取付る。
メーカーが対策品として出しているものがこの方法をとっています。個人レベルで新たなヒートシンクを取り付けるのは難しいですが、熱伝導率の高い銅版などをレギュレーターとフレームの間に挟み込んで熱容量を増やしつつ放熱面積も稼ぐ事ができます。溝などを掘って表面積を増やすと更に効率がアップします。
2. 強制冷却ファンを取付る。
冷却を自然対流に頼らず、積極的に空気を吹き付けて放熱させます。ファンの取り付け空間と電装系への加工が必要ですね。原理はCPUクーラーと全く一緒です。
3. 外気を取り入れるダクトを取り付ける。
上記二点とも対策として正しいのですが、積極的に換気されていないシートカウル等の内部空気が温まりきってしまったら、意味がなくなってしまいます。むしろ空気への放熱効率を上げたので温まるのが早くなる位でしょう。そこで新鮮な外気を取り入れてレギュレーター周囲の空気温度を下げて冷却効率を維持するべきでしょう。ダクトの設置場所さえ良ければヒートシンクや冷却ファンによる補助は必要なくなってしまうかも。
4. 取り付け場所を移動する
一番効果的なのは[熱源から遠く、換気が良く、雨等が当たらない場所]への移設です。多少追加費用があるでしょうが、この方法が一番確実です。

対策をしても完全にバンクを防止する事は不可能とは思いますが、対策しないままでいるよりはずっと良いと思います。あとは「車検ごと」など期間を決めて定期交換するという方法をとれば、より確実にトラブルを回避できるでしょう。

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